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今日の本 「ゲルニカ」 [本]

今日の本 「ゲルニカ」(宮下誠/光文社新書335:08年)

衝撃的、圧倒的な魅力で迫るピカソの代表作のひとつ「ゲルニカ」。
実は、その背景などの詳細を、私自身、把握していなかったのだ。
-ピカソが描いた不安と予感- とのサブタイトルがついた本書。
「ゲルニカ」を軸に、私たちの美術鑑賞のあり方まで言及した一冊である。
なんか、ついつい気になり手にしました。

著者は、國學院大学文学部教授。多数の著作がありますが、
美術に関したものばかりでなく、クラシックなど音楽に関する著作も。
(そのあたりも読んでみたいですね)

前半は、まさに「ゲルニカ」とピカソについて割いています。
注目すべきは第2章の製作過程。
1937年5月1日から、1ヶ月と少しにわたる製作の経緯を、多数のゲルニカに関わる
『ゲルニカ習作』とともに解説。
このように製作過程を当時のピカソが明かすのは、とても珍しかったとのこと。
完成に至る思考の移ろいが、とても興味深い。

後半は、オリジナリティ、歴史画、戦争画という3つの切り口にて、
「ゲルニカ」を題材として、美術史を紐解いていく。
この後半で私が惹かれたのは、オリジナリティについて書かれた第4章。
「ゲルニカ」からは少し離れますが、
『オリジナリティの問題がことさら云々されるようになるのは20世紀を迎えてから』
とのこと。これは美術に限らず、西洋音楽についても言えるらしい。
そして、日本では第二次世界大戦以降、欧米の文化を学んでからとのこと。
うーん、オリジナリティの歴史、結構浅かったんですね。
技術系の仕事に就いている私としては、常に特許という“オリジナリティ”を
意識にする日々。はるか昔から“オリジナリティ”という唯一無二の世界が
確立していたと誤認していましたね。

筆者は最後に、「作品とは、あなた自身を映す鏡なのである」
「肝心なのは作品を通して新たなあなたを見いだしてゆくことだ」
「一枚の絵を考えることは、世界をよりよく理解することにほかならない」
と結んでいる。真摯に作品と対峙する筆者の、実に深い言葉ですね。
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コメント 7

ユメオイ

素敵ですね、この本が欲しくなりました!

作品とは、あなたをうつす鏡。
とても深い言葉です
by ユメオイ (2008-03-18 02:55) 

FUCKINTOSH66

えぇえぇ。作品は作者その人そのもの
絵だけぢゃなくてもギターでもベースでもドラムでも歌でも
広い分野に当てはまるんぢゃないでしょーか
自分の絵が自分を育てますからねぇ(その逆もあるけど・笑)
だからずっとどこまでも旅。修行のようなものですわん


by FUCKINTOSH66 (2008-03-18 13:43) 

TBM

>xml_xsl様 niceありがとうございます。
by TBM (2008-03-19 00:19) 

TBM

>ユメオイ様 niceとコメントありがとうございます。
「ゲルニカ」に惹かれて手にしたのですが、
内容は、幅広く美術を俯瞰するものでした。
深く、心に残る1冊、ぜひ。
by TBM (2008-03-19 00:30) 

TBM

>FUCKINTOSH66さま、niceとコメントありがとうございます。
確かにそうですよね。
アーティストとしての表現者、全てにあてはまると思います。
ここのところ、私は弓の修練ばかりなのですが、
もっとアートの世界にも関わっていきたいですね。
by TBM (2008-03-19 00:51) 

FUCKINTOSH66

ところで!
RSS、登録済みのTBMさんのURLを削除しては
再登録し、を、何度か繰り返してたら、さっきやーっと
更新の表示が今日の日付になりましたよ〜(涙)
長かった〜(笑)まったくソネットってば...
by FUCKINTOSH66 (2008-03-19 13:51) 

TBM

>FUCKINTOSH66さま。
うわぁ、いろいろ試していただいたようで、
ありがとうございます!
しっかしね、大丈夫かソネット???
by TBM (2008-03-20 01:22) 

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